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王崎タカトが死んだ。年末の音楽賞授賞式、会場に向かうカーペットの上で刺殺されたのだ。凶行に及んだのは・・・速坂恭一。スターの突然の死は世間に大きなショックを与え、悲しみに暮れるものや奇行に走るものまで出始める。半年後には、有志のファンたちにより記念館まで建設された。
虚ろな目でテレビを見つめるねね。自分の両親を手に掛けた男・・・王崎タカト。世間の誰もが、彼の死が間違いであってほしいと願っている。一方の恭一は、最悪の殺人犯として懲役14年の実刑を受けることになった。「真実から私を遠ざけることが・・・私を守ることだったのか?」ねねは思い悩むが、不意に何かに気付く。野菊が部屋を訪れたとき、そこにねねの姿はなかった。

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N県S市、王崎タカト記念館内、王崎タカトメモリアルホール。タカトの曲と映像が流れ、大勢のファンが集まっている。死してなお人々の人気を集めるタカト。しかし彼らのタカトへ向けた感情は、生前と比べ異様な方向へ変化していた。さながら崇拝、信仰のような・・・