33-1

あのとき、確かにこの手で王崎タカトを殺した。殺したはずだ・・・。ねねの「この事件はまだ終わっていないんじゃないか?」という言葉を受けて、恭一は思いあぐねる。ネットで流れている、タカトが病人に奇跡的な回復をもたらせたという噂。もしそれがタカトの力ではなく、他の仲間の能力だったとしたら?その能力が死者をも蘇らせる事のできるものだとしたら?王崎タカトが”復活”という分かりやすい奇跡を果たした場合、彼は生前を遥かに凌ぐ、神に比肩するほどのカリスマを得るだろう。もしそうなったら・・・恭一は、タカトさえ始末すればいいと思っていた自分の甘さを悔やむ。

33-2

食事の時間、偶然知り合った隣の席の囚人。彼に看守の注意をひくように頼んだ恭一は、刑務所の高い高い壁の前に佇んでいた。決意を新たにした恭一の足元から、風が立ち上る。次の瞬間、彼の体は中空へと飛び上がった。